この世は短き者と知れ 長き未来の代かもじ
諸仏の願のくしのはに 通り兼ねたるむつれ髪
釈迦牟尼如来の教にも 広長舌の鬢付けで 言うに言われぬ慈悲心 説くに説かれぬ慈悲心
知識の御手にかかる身は 一念帰命と任すゆえ
往相還相ととき分けて 機のあつかいの結髪も
仏智の鋏で切り捨てて 頼むすべくのすき油
増す増す歓喜のつやも出で 罪も障りもその儘で
直すも御法のかたによる 吾が機であつかう事勿れ
光明摂取の中指も 信ずる一つの他に無し
発願回向の竿指に 菩提の花や金剛の
玉と移れし相鏡 今は疑心の曇りなく
十方世界も輝けば 心の鬢の鬢ぬ様
明け暮れ胸の鏡台に 向て懺悔の洗へ髪
衆生の娘の機に応じ 今は安堵の思へ出に
娑婆は大年こすなれば 浄土の晴の花嫁に
釈迦は往けに弥陀は来へ 土産は二尊がこしらいて 安楽浄土に到る時 諸仏菩薩に守られて
さて美麗き妙好人 それで最勝人なりと
皆な褒め給ふ臨終も 今宵一夜の仮の宿
報謝の念仏怠らず 忘れ給ふな一大事
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